新卒で、限界集落へ。
2026年4月。22年間暮らした神奈川県藤沢市を離れ、私は新卒で三重県御浜町に移住しました。縁もゆかりもない土地の、いわゆる限界集落です。人生で初めての引越しでした。
きっかけは就職活動でした。志望理由を満足に書ける会社が見つからず、休学や留学も考えました。けれど、せっかくなら人と違うことをしたい。そう思って内定を断り、まずは日本の、自分がまだ知らない「田舎」へ行くことに決めました。
「食」だけは、誰かが作り続けなければならない。
田舎で何をして生きるかを考えて、行き着いたのが農業です。大学の卒業論文では「令和の米騒動」をきっかけに、日本の米農業について書きました。衣・食・住のうち、衣と住は一度手に入れればしばらく使い続けられます。でも食だけは、常に誰かが作り続けなければ成り立ちません。
役場や就農支援センター、農家の方々を訪ね歩き、移住先の候補はスプレッドシートで数値化して比べました。最後に選んだのは、みかんの産地であり、熊野古道をはじめとする世界遺産が近く、農業を起点にさまざまな事業に挑戦できる可能性が広い御浜町でした。
住んでいる人がいなければ、地域は続かない。
みかんの農業研修を受けながら、国道の草刈りや地域のお祭りに参加してきました。そこで実感したのは、「関係人口」や「二拠点生活」といった関わり方が増えても、最低限そこに「住んでいる人」がいなければ、暮らしは成り立たないということです。
御浜町では、働く人の5人に1人が農業に就いています。農業で稼いでいる農家の割合も、県平均の2倍以上あります。それなのに、18歳前後で同世代の半分以上が町を出ていきます。仕事が「ない」のではなく、仕事の「種類」が少ないために、若い人の選択肢に入っていない。私はこの町で、そんな「ねじれ」を見ました。
稼ぐ仕組みを、地域に残す。
次案株式会社は、全国の地域に、その土地の特徴を生かした「雇用が生まれる事業」をつくるための会社です。AIを使った企業支援や観光で利益を生み、その利益を元手に、地域の基盤産業を今の時代の売り方に組み直していきます。最初の一歩が、御浜町のみかん産業です。
主役は、その土地で暮らし、働く人たちです。私たちは黒子として、仕組みと資金とテクノロジーを持ち込みます。地域同士で移住者を取り合うのではなく、地域を維持できるだけの人が無理なく住み続けられる「働く場所」という確実な土台を、ひとつずつ全国につくっていきます。
地方だけでなく、都会にも、日本全体にも良いことを。御浜から始まるこの挑戦に、ぜひ力を貸してください。
次案株式会社 代表取締役上野 彩高